1986 年 37 巻 1 号 p. 39-42
高枕無憂散 (方病回春) は不眠に用いられると記載があり, 香月牛山等も効果があると述べている。しかし具体的な指示, 症例の記載は見あたらない。一方不眠の漢方治療は困難なことがある。筆者は不眠で他の薬方が無効であった4例に本方を使用して有効であった。症例は47~54歳の男女で, 熟眠障害が主であり, 神経質性不眠に分類されるものが多かった。その漢方医学的現症は虚証で胃内停水, 腹直筋の攣急などが共通して認められた。
本方の薬方構成は二陳湯の加味あるいは温胆湯の加減とみることができる。