日本東洋医学雑誌
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利隔湯の使用経験
徳留 一博
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1989 年 39 巻 4 号 p. 253-261

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抄録

利隔湯は本朝経験方で膈噎に用いられる処方であるが, 一部の専門家の間で使われ, 一般医家には良く知られていないのが実情である。また, 明らかな形態を備えた症例報告も未だないようである。
今回, 嚥下困難や胸骨後部の異常感などの症状を訴える患者24人に, 利隔湯を投与し良好な成績を得た。今回の治療経験により, 従来利隔湯の応用として記載されている食道癌に加えて, 食道潰瘍, アカラシア, 食道裂孔ヘルニアによる嚥下困難や, 食道空腸吻合術後の通過障害に有効であることがわかった。また, 食道や咽喉部に器質的病変を確認できない患者の通過障害や胸骨後部の異常感などに対しても有効であることがわかった。
以上のことから利隔湯の応用を拡大できたこと, 日常臨床に広く使われるべき有用な処方であることがわかったので報告する。

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