日本東洋医学雑誌
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家庭内暴力を伴う登校拒否に対する漢方薬の使用経験
岡島 幸代
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1989 年 40 巻 2 号 p. 99-101

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抄録

母親に対する ambivalence (両価的) 感情, 自己同一性障害などのため, 家庭内で攻撃的となり, 不登校, 身体的不定愁訴を訴えて来院した症例の心理機制を漢方的に考察すると, 肝気鬱滞と考えられた。これによる肝陽気上亢の症状と, 二次的に木克土となったための脾胃の症状が出たと考えられた。柴胡加竜骨牡蠣湯が平肝潜陽, 苓桂朮甘湯が健脾補胃作用としてはたらき, 症状の改善がえられた。同時に生活が活動的になり, 働く意欲もでて, 治療者との良好な関係を保つことができた。登校拒否, 家庭内暴力といったものでも, 漢方薬を利用すれば, かなり目的を達することができることがわかった。しかし本症例でみるように, 家庭病理の解決が不充分であると, 完全解決に少し廻り道が必要で, そこらに漢方だけでは限界があると思われた。

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