日本東洋医学雑誌
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腹診と腹部超音波所見との関連性について
高橋 宏三土佐 寛順嶋田 豊寺澤 捷年
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1991 年 42 巻 1 号 p. 1-9

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抄録

漢方医学における腹診所見と腹部超音波所見との関連性について検討した。対象は富山医科薬科大学和漢診療部通院中の124例。腹部超音波検査直前に腹診を行い, 腹候と超音波所見を検討した。腹候は, 腹力, 腹直筋緊張度, 心下痞鞭, 胸脇苦満, 胃部振水音, 臍上悸, 臍下悸, 臍傍圧痛, 回盲部圧痛, S字結腸部圧痛, 小腹不仁について評価した。超音波所見は肝の大きさ, 門脈系脈管の各部位における太さ, 胃壁の厚さ, 膵, 胆嚢, 脾臓各々の大きさについて評価した。結果は (1) 右の胸脇苦満が高度なものほど肝右葉に対し左葉が相対的に大きく (2) 心下痞鞭が高度なほど肝左葉の厚さに対して頭尾方向の長さが長く, また肝右葉に対して左葉が相対的に大きかった。(3) 胃部振水音が著明な場合には膵体部の厚さが薄く (4) 臍上悸が著明な場合には肝左葉の厚さに対して長さが長かった。これらの成績は, 腹候が肝や膵など腹腔内の諸臓器の形態と密接に関連する可能性を示唆するものである。

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