1992 年 43 巻 2 号 p. 297-301
悪性腫瘍による癌性腹膜炎6例に柴苓湯エキス顆粒を投与した。服薬状況は良好で, 明らかな副作用は認められなかった。腹部膨満感, 下腿浮腫の減少を認め, 柴苓湯投与前に乏尿傾向のあった症例では尿量の増加などを認めた。明らかな予後の改善は見られなかったが, 全身的な化学療法が可能となった症例もあり, 柴苓湯エキス顆粒の投与は, 悪液質にある末期癌の癌性腹膜炎症例の自覚症状の改善, 適切な尿量の確保による腹腔内貯留液の減少, さらにはPS(performance status) の grade や quality of life の向上に有用であると思われた。また, 尿量に関しては, 循環血漿量, 血清電解質のバランスを保ちながら, 調節的に作用するものと思われた。