日本東洋医学雑誌
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柴苓湯が奏効した尋常性天疱瘡の1例
大草 康弘杉山 悦朗田中 信
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1993 年 43 巻 3 号 p. 447-452

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抄録

柴苓湯が奏効した尋常性天疱槍の1例を報告した。症例は49歳, 女性で口腔粘膜・躯幹・四肢に水疱, びらんが多発しており, 臨床所見, 病理組織学的所見および蛍光抗体法所見より本症と診断した。Prednisolone 40mg/日の投与を開始したところ躯幹・四肢の水疱の新生は止まったが, びらんは容易に上皮化せず, 口腔粘膜には依然として水疱, びらんの新生が認められた。Cyclophosphamide を併用するも効果がないため柴苓湯9.09/日を投与した。柴苓湯投与5日目より口腔粘膜の水疱の新生は止まり, びらんも急速に上皮化した。以後 Prednisolone を漸減したが水疱の再燃なく経過良好である。天疱瘡をはじめ各種自己免疫性水疱症の治療においてステロイド剤の効果が不十分な場合や減量が困難な場合には, ステロイド剤の作用を増強し, またステロイド剤の副作用を軽減するための併用療法として柴苓湯は有用な薬剤であると考えられる。

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