日本東洋医学雑誌
Online ISSN : 1882-756X
Print ISSN : 0287-4857
ISSN-L : 0287-4857
桃核承気湯が有効であった間質性肺炎を伴った進行性全身性硬化症の一例
田中 裕士五十嵐 知文菅谷 文子阿部 庄作
著者情報
ジャーナル フリー

1993 年 43 巻 4 号 p. 557-563

詳細
抄録

症例は, 36歳女性, 8年前に進行性全身性硬化症 (PSS) と診断され, 1年前よりプレドニン25mg/日を投薬されていた。しかし, 全身のこわばり, 関節痛, レイノー現象が悪化し, 咳漱も出現してきたため入院, 胸部単純像, CT像, 肺機能, 血液検査より, 間質性肺炎を合併したPSSと診断した。身体所見より小腹急結の認められた「〓血」で「実証」と判断し桃核承気湯を投与, 一時レイノー現象が強くなったが, 対症療法で軽減した。その後, 全身のこわばり, 関節痛, レイノー現象, 咳漱は徐々に軽減し, 血中抗核抗体, 抗Scl-70抗体は4倍以上改善し, 血沈, CRP, IgG, IgAも減少し, 肺活量は270ml増加した。入院約8ヵ月後, ブドウ球菌による敗血症を起こし死亡した。随証的に投与した桃核承気湯は, 自覚症状, 検査成績を改善したことより, 間質性肺炎を伴ったPSSに有効と考えられた。

著者関連情報
© 社団法人 日本東洋医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top