1993 年 43 巻 4 号 p. 557-563
症例は, 36歳女性, 8年前に進行性全身性硬化症 (PSS) と診断され, 1年前よりプレドニン25mg/日を投薬されていた。しかし, 全身のこわばり, 関節痛, レイノー現象が悪化し, 咳漱も出現してきたため入院, 胸部単純像, CT像, 肺機能, 血液検査より, 間質性肺炎を合併したPSSと診断した。身体所見より小腹急結の認められた「〓血」で「実証」と判断し桃核承気湯を投与, 一時レイノー現象が強くなったが, 対症療法で軽減した。その後, 全身のこわばり, 関節痛, レイノー現象, 咳漱は徐々に軽減し, 血中抗核抗体, 抗Scl-70抗体は4倍以上改善し, 血沈, CRP, IgG, IgAも減少し, 肺活量は270ml増加した。入院約8ヵ月後, ブドウ球菌による敗血症を起こし死亡した。随証的に投与した桃核承気湯は, 自覚症状, 検査成績を改善したことより, 間質性肺炎を伴ったPSSに有効と考えられた。