日本東洋医学雑誌
Online ISSN : 1882-756X
Print ISSN : 0287-4857
ISSN-L : 0287-4857
不定愁訴症候群、特に更年期障害に対する漢方剤 (柴胡桂枝乾姜湯、加味逍遙散、柴胡加竜骨牡蠣湯) の有用性の検討
玉舎 輝彦伊藤 美穂伊藤 俊哉
著者情報
ジャーナル フリー

1994 年 44 巻 3 号 p. 333-343

詳細
抄録

不定愁訴症候群 (65例), 特に更年期障害 (59例) に対して, 虚実度スコアを基準に, 虚証タイプに柴胡桂枝乾姜湯を, 中間証タイプに加味迫遥散を, 実証に柴胡加竜骨牡蠣湯を最低8週間投与 (原則) した。
患者背景から, 虚証タイプは40~49歳代に多く, 実証タイプになるほど50~59歳代が増加した。投与前の更年期指数は群間差はないが, 軽~中等症の占める割合は大きい。
背景因子から, 実証タイプほど, 顔色光沢あり, 強い緊張度を示し, 虚証タイプほど, 顔色蒼白となり, 弱い緊張度を示した。その他の証である心下部振水音, 季肋部の抵抗, 目のクマ, 舌暗紫色化, 臍傍抵抗などは, 虚実の差はなく, 軽度であるが90%前後に認められ, 不定愁訴症候群の共通の証と考えられた。
更年期指数の変動からみると, 実証~中間証タイプは中等度の重症度 (平均値) を示し, 虚証タイプは軽症の重症度 (平均) を示した。方剤投与により, 虚証タイプでは2週後に, 中間証タイプでは6週後, 実証タイプでは8週後に正常指数に低下した。
投与中 (8週後) の臨床検査値とホルモン検査値の平均値に変動は認められなかった。
総合評価として, 改善度 (著明改善+改善) は虚証タイプに高く80%であり, 中間証~実証タイプの60%強であった。安全度は各方剤間に問題がなく, 高い。また有用度 (極めて有用+有用) は虚証タイプの柴胡桂枝乾姜湯に高く, つづいて中間証タイプの加味逍遥散, 実証タイプの柴胡加竜骨牡蠣湯の順となった。

著者関連情報
© 社団法人 日本東洋医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top