日本東洋医学雑誌
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苓桂朮甘湯の作用機序に関する研究
Acute 0autonomic neuropathy に残存した起立性低血圧の一症例について
塩谷 雄二麻野井 英次松田 治巳嶋田 豊寺澤 捷年
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1994 年 44 巻 3 号 p. 427-436

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抄録

Acute autonomic neuropathy は末梢性自律神経系が急性に原発生, 広汎性に障害される一連の症候群である。本症の不完全治癒症例に残存した難治性の起立性低血圧に対して, 一般的には昇圧剤, ミネラルコルチコイドが用いられるが, これらの薬剤が無効であった症例に苓桂朮甘湯が奏効した。これまでに苓桂朮甘湯を Acute autonomic neuropathy に用いた報告はない。苓桂朮甘湯の作用加機序の解明のために, 苓桂朮甘湯の投与前後で起立試験, 内分泌学的検査, 薬物負荷試験, 循環動態検査などを施行した。苓桂朮甘湯の投与により血圧の上昇を認めたが, その作用機序は末梢血管抵抗の増加にあることが明らかとなった。一方, 心拍出量は低下し, 亢進傾向にあったレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系が補正された。末梢血管抵抗の増加の原因としては, 苓桂朮甘湯の投与により交感神経の活動性が抑制され, しかも, 末梢血管の receptor の denervation hypersensitivity が改善されたことから, 血管壁に対する直接的な作用であることが考えられた。

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