日本東洋医学雑誌
Online ISSN : 1882-756X
Print ISSN : 0287-4857
ISSN-L : 0287-4857
茯苓桂枝甘草大棗湯が奏効した気管支喘息・過敏性腸症候群の一合併例
柴原 直利伊藤 隆嶋田 豊松田 治己寺澤 捷年
著者情報
ジャーナル フリー

1994 年 44 巻 4 号 p. 521-526

詳細
抄録

茯苓桂枝甘草大棗湯が奏効した気管支喘息・過敏性腸症候群の合併例を報告した。症例は54歳, 女性。反復する腹痛および咳嗽発作を主訴として当科に入院。腹痛発作に関しては過敏性腸症候群, 咳嗽発作は気管支喘息と診断し, 腹痛に対し烏頭桂枝湯・赤丸料・解急蜀椒湯を, また咳嗽に対しては苓甘姜味辛夏仁湯・蘇子降気湯などを逐次投与したが無効であった。本例の腹痛・咳嗽発作の際には発汗が著明であること, 心窩部より咽喉に衝き上がるような感じを伴っていること, 頭頸部・胸部の熱感とともに腹中に冷えがあると訴えること, また腹候で臍上悸・臍下悸が著明であったことから, この発作時の病態を咳嗽・腹痛も含めて奔豚気病の範疇に入るものと考えた。そこで茯苓桂枝甘草大棗湯に転方したところ, 両者ともにこの一方剤で改善が得られた。一見すると二病症の併存と思われる病態であっても, 漢方医学的に単一のものとして対処しうる病態がある。

著者関連情報
© 社団法人 日本東洋医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top