1994 年 44 巻 4 号 p. 603-606
漢方は本来“証”によって方剤を選ぶべきであるが, 実際には病 (症) 名治療である程度効を奏することもある。そこで日本においてしばしば病 (症) 名治療として用いられる方剤の構成生薬の薬性, 薬向を調べ, 病 (症) 名治療が随証治療と一致する可能性を検討した。
まずしばしば病名治療的に用いられるケース12を選んで, 適応と考えられる%を考察した。その結果, 例えば感冒初期 (表証) に葛根湯 (昇浮性・温性・潟性) は, 虚証 (自汗) や熱証に不適のことから, 適応はせいぜい50%位であるが, 気管支喘息 (間歇期) に柴朴湯は80%程度の適応と判断した。また大黄甘草湯・芍薬甘草湯のように, 頓服的ないし対症的に用いられる方剤の場合は, 特に“証”を考えないで用い得ることを明らかにした。