日本東洋医学雑誌
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柴苓湯の併用で心不全をコントロールすることができた一例
溝部 宏毅新井 信佐藤 弘代田 文彦
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1994 年 45 巻 1 号 p. 123-127

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抄録

呼吸困難と起坐呼吸を主訴に来院した82歳の心不全患者に対して西洋医学的な治療を行った。利尿剤に対する反応は良く, 比較的短期間に心不全は改善した。しかし水分制限が守れずに心不全が悪化し入退院をくり返した。入院後は安静と水分制限のみで呼吸困難は改善した。利尿剤や血管拡張剤を増量して退院しても心不全を再発した。中等度の胸脇苦満と水毒を認めたので柴苓湯を併用した。柴苓湯を併用してから6週間後に胸脇苦満は消失した。また食欲が亢進し, 口渇が軽くなり, 水分制限が守れるようになり心不全の再発をみなくなった。心不全の治療には木防已湯が用いられることが多いが,心不全は一種の水毒であり五苓散のような利水剤が有効であったと考えられる。

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