腎移植患者の蛋白尿に対する治療は, 種々の治療が試みられているが, 明確に有効なものはない。われわれは, 11例の蛋白尿を有する腎移植患者に柴苓湯を投与し, この効果を検討した。慢性拒絶反応の4例と慢性拒絶反応を認めない7例にわけ検討するに, 慢性拒絶反応例では改善したものはなかった。しかし慢性拒絶反応を認めない蛋白尿症例では, 3例に蛋白尿に軽快がみられ, 1例は腎機能の回復傾向がみられた。蛋白尿の軽快症例の1例では, 免疫抑制剤FK506の腎毒性を軽減する可能性が示唆された。蛋白尿を有する腎移植患者に対して, 柴苓湯は慢性拒絶反応を認めないものには有効であると考えられた。