日本東洋医学雑誌
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紫円の使用経験
後藤 博三新谷 卓弘三潴 忠道寺沢 捷年
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1995 年 45 巻 4 号 p. 927-934

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抄録

紫円が奏効した3症例を報告した。症例1は48歳の女性。約2年前から起坐呼吸が出現。うっ血性心不全の診断にて加療中, 疲労時に再発した。下痢後に症状が軽快したことから, 紫円を投与した。十数回の下痢の後, 呼吸苦の改善と胸部レントゲン写真で心胸郭比の減少を認めた。症例2は64歳の女性。約1年前に全身浮腫と食欲不振が出現した。全身性アミロイドーシスによるネフローゼ症候群と診断。補気健中湯と茯苓四逆湯の併用で浮腫は軽減した。しかし, 食欲不振が継続したため, 著明な心下痞鞭を目標に紫円を投与した。頻回の下痢と嘔吐後, 食欲の改善と心下痞鞭の軽減を認めた。症例3は71歳の女性。約8年前に乳癌の手術後, 左上肢の腫脹が出現した。腫脹と便秘を目標に紫円を投与した。投与日毎に下痢を生じ, 上腕径と体重の減少を認めた。今回の症例から, 紫円は心下痞鞭や便秘を目標にあまり虚実の差に捕われることなく水毒を目標に使用できる有用な治療方剤と考えられた。

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