日本東洋医学雑誌
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腸閉塞の予防を目的とした大黄附子湯の使用経験
櫻井 重樹常田 享詳
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1995 年 46 巻 1 号 p. 9-19

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抄録

腸閉塞予防の目的で大黄附子湯を用い, 日常有していた腹部症状が消失し, 腸閉塞も再発していない5症例を報告した。
症例1は78歳の女性で, 23年前に受けた子宮筋腫摘出術の後に反復して腸閉塞が出現した。1987年11月に腹痛と嘔吐で当院を救急受診し, 大建中湯の注腸で腹痛と嘔吐はわずかに改善したが, 排便がないため大黄附子湯に転方したところ, その後7年間, 経過順調である。
症例2は34歳の男性で, 1986年に十二指腸潰瘍の穿孔で緊急手術を受けた。手術後は数回の腹痛発作が出没。1989年7月に腹痛と嘔吐を主訴に来院。腸閉塞と診断し, 大建中湯の注腸に次いで, 芍薬甘草湯合大黄附子湯を投薬し, 5年後の現在も経過順調である。
症例3は83歳の男性で, 反復性の腸閉塞を主訴に来院。1975年に胃癌のため胃の亜全摘術を受けている。手術後, 1年に1~2回の頻度で腸閉塞を起こし, 入院を繰り返していた。1984年には腸閉塞が保存的治療では軽快せず手術を受けた。しかし, 手術後も腸閉塞症状が反復して出現したため, 1990年3月に当科を受診した。当初, 大建中湯合小建中湯を投与し, 約1年間は腸閉塞は来さなかったが, 1991年10月に腸閉塞となり当科入院。大建中湯の注腸に次いで, 大黄附子湯を投与したところ, 退院後3年を経過した現在も経過順調である。
症例4は67歳の女性で, 繰り返す腸閉塞の治療目的で当科を受診した。1970年子宮癌のため子宮全摘出術と放射線治療を受けた。術後5年を経過してから腸閉塞が反復して出現するようになった。大黄附子湯を投与して2年半経った現在も経過順調である。
症例5は70歳の女性で1992年胃癌で胃亜全摘術を受けた。術後に便秘が出現。術後2ヵ月で腸閉塞で救急入院。大黄附子湯の投与でその後2年間経過順調である。

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