日本東洋医学雑誌
Online ISSN : 1882-756X
Print ISSN : 0287-4857
ISSN-L : 0287-4857
体外受精失敗後, 補中益気湯及び桂枝茯苓丸の併用で自然妊娠した男性不妊の一例
桜沢 俊秋室賀 昭三
著者情報
ジャーナル フリー

1996 年 46 巻 4 号 p. 573-579

詳細
抄録

本症例は Grade I の精索静脈瘤のある原発性男性不妊患老で, 不妊歴8年, 配偶者間人工授精法26回失敗, 子宮鏡下卵管内人工授精法2回失敗, その後, 体外受精胚移植法を2回実施した。初回は10個採卵し1個受精卵割し着床に失敗。2回目は5個採卵し受精0であった。このように受精能の低下した症例に対して, 補中益気湯および桂枝茯苓丸の併用を行い, 併用開始後3ヵ月で自然妊娠に成功し, 経膣自然分娩にて健康な男児を出生した症例を経験した。体外受精胚移植法で失敗した後に自然妊娠する症例は時々みられるが, 受精能低下例では報告はない。男性不妊は受精能低下例が多く, そのような症例では通常の体外受精胚移植法では成功率が極めて低い。そのため顕微受精も急速に発展してきているが, 受精能改善に対してはあまり治療法がないのが現状である。そのようななかで漢方治療は受精能改善に対する1つの有効な治療方法であると思われる。

著者関連情報
© 社団法人 日本東洋医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top