活性酸素による酸化的ストレスにより種々の疾患 (特に老化, 脳神経系疾患など) の起こることが示唆されている。漢方方剤には, それを抑制する作用のあるものがある。本研究では, スモンに対して一定度の症状改善効果が認められている黄耆桂枝五物湯に酸化的ストレス障害を抑制する作用のあることを認めた。すなわち, スモンの発症物質であるキノホルムど同族体である 8-hydroxyquinoline と3価鉄の共存による脳ホモジネート脂質過酸化に対して, 黄耆桂枝五物湯は抑制作用があった。また, この反応が活性酸素の一種である hydroxy radical によることが確認されたことにより, その hydroxy radical scavenger 作用を検討したところ, その作用が認められた。そして, 黄耆桂枝五物湯にはラジカルそのものを除去する作用も認められた。