1997 年 48 巻 3 号 p. 327-333
十全大補湯により全身性エリテマトーデス (SLE) に伴う難治性の血小板減少症が長期に渡り良好な経過を示した一例を経験した。
症例は38歳の女性。1974年血小板減少症を認め, 翌年腎障害が出現しSLEと診断され, 1984年には血液透析に導入。この間ステロイド剤減量の度に著しい血小板減少・出血傾向を認めた。1989年より当科受診したが, 当初は著しい効果はみられず, 1992年9月十二指腸潰瘍出血を併発し和漢薬治療は一時中断した。治療再開後1993年6月から十全大補湯を開始したところ, 血小板は10~15万/mm3を維持できたためステロイド剤が減量され, 1994年7月よりPSL 5mg隔日投与となった。1995年7月からは抗DNA抗体も陰性化し、1996年12月現在まで血小板は15~20万/mm3を維持している。