日本東洋医学雑誌
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男性不妊に対する弁証論治による漢方療法
田村 哲彦石川 博通田代 真一
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1999 年 49 巻 4 号 p. 623-628

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抄録

これまで精液所見不良例に対して漢方療法が行われてきたが, エキス剤を画一的に使用した例が多く, 漢方本来の四診 (望診, 聞診, 問診, 切診) により証を決定し, 漢方処方を適用する弁証論治が行われた例は少ない。精液所見不良を主訴とする男性不妊33例に弁証論治による漢方湯液療法を試みた。気・血・津液 (水)・臓腋などに基づく症候を漢方四診により分類した結果, 肝気鬱証 (11例), 腎虚証 (5例), 脾気虚証 (9例), 痰湿証 (5例), 湿熱証 (3例) であり, 各々柴胡疏肝湯, 八味地黄丸・牛車腎気丸, 補中益気湯, 柴胡加竜骨牡蛎湯, 竜胆潟肝湯を基本とした処方を用いた。方剤は煎剤とし, 6ヶ月間投与した。この間, 証の変化に伴い方剤の変更, 加減を行った。従来, 男性不妊の漢方療法は腎虚証並びに脾気虚証を指標とする場合が多かったが, 本研究では肝気鬱証が11例 (33%) を占めた。投与前後の精液所見, 血清中のホルモンを比較した結果, 精子濃度, 運動率に有意差を認めなかったが, 血清テストステロン, エストラジオールは有意的に減少していた。妊娠例は肝気鬱証で4例, 脾気虚証, 痰湿証, 湿熱証の各群で各々1例認められた。

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