日本東洋医学雑誌
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苓桂朮甘湯の作用と臨床応用の考察
塩谷 雄二新谷 卓弘藤永 洋酒井 伸也寺澤 捷年
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1999 年 50 巻 1 号 p. 21-28

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抄録

苓桂朮甘湯の適応症には起立性低血圧, 心臓神経症, 片頭痛, うっ血性心不全, 良性発作性頭位眩暈症, 眼疾患など多い。苓桂朮甘湯は東洋医学的には水毒に対する利水剤とされているが, 本方の利水作用の本態は未だ充分に解明されていない。先に我々は末梢の自律神経障害が原因の起立性低血圧患者において苓桂朮甘湯の投与前後での循環動態検査を行った。投与前は循環血液量が過剰に増大している水毒の病態であった。投与後は末梢血管抵抗の増加により, 立位での血圧を上昇させたが, 一方, 過剰に増大した循環血液量は減少させることを報告した。今回, 片頭痛を伴う起立性低血圧, 心臓神経症, うっ血性心不全, 透析時低血圧の4症例に対して本方を投与し, 末梢血管抵抗を増加させる働きも有することを再度認識することができた。いわゆる利水作用の一局面として, 苓桂朮甘湯は血管収縮により末梢血管抵抗を増加させることによって, 余剰に体内に貯留した水 (水毒) を利水する作用があることを認識することが重要である。

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