1999 年 50 巻 3 号 p. 461-470
鉄剤による治療が副作用等の理由により断念せざるを得なかった鉄欠乏性貧血の患者12例に対し, 人参養栄湯単独投与による治療を行い, 経過を観察した。鉄剤あるいは鉄剤+人参養栄湯併用による治療に比べて, 人参養栄湯単独投与では効果発現は緩慢で, 速効性は期待出来ないが, 期間を経るにつれて増血の傾向が現われ, 12週後には正常値に達する例もあった。また, 頭重感や四肢冷感など貧血に伴う不定愁訴は早期に改善を見ることが出来た。これら人参養栄湯の効果は多くの報告例でも立証されており, その作用には食欲亢進による増血養分の吸収促進効果や骨髄造血系幹細胞賦活作用などの薬理作用が関与しているものと推察された。今後, 漢方治療は注目されるものと考えられる。