日本東洋医学雑誌
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桂枝茯苓丸の急性投与による腹部皮膚表面温度の変化
塩谷 雄二嶋田 豊後藤 博三伊藤 隆寺澤 捷年
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2000 年 50 巻 5 号 p. 851-860

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抄録

現在, 桂枝茯苓丸は代表的な駆〓血剤の一つとして広く用いられているが, 更年期障害などの「冷えのぼせ」(上熱下寒) を呈する〓血病態の成人女性に最も繁用されている。今回, 冷えのぼせを自覚する群 (成人女性8名) と下肢の冷感のみを自覚する群 (成人女性8名) に分け, 腹部のサーモグラフィをおこなったところ, 冷えのぼせ群は下肢冷感群に比較して, 上腹部と下腹部の皮膚表面の温度差が大きく有意差を認めた。両群に自家製・桂枝茯苓丸の投薬後60分の経過を観察したところ, 下肢冷感群では上腹部, 下腹部ともに皮膚温が低下した。一方, 冷えのぼせ群では上腹部の皮膚温は低下したが, 下腹部では逆に上昇し, 上腹部と下腹部の温度差は縮小した。桂枝茯苓丸は内分泌系と自律神経系のバランス失調状態である「冷えのぼせ」に対して, 是正する方向に働いたことになる。桂枝茯苓丸は上半身の皮膚の末梢血管拡張による皮膚温上昇である「のぼせ」に対して, 末梢血管を収縮させて皮膚温を低下させるだけでなく, 下腹部の血流を増加させ, 〓血病態の一つである骨盤内うっ血を改善させる可能性が示唆された。

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