日本東洋医学雑誌
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長期臥床患者に併発した急性胆嚢炎・胆管炎に対する漢方治療の経験
引網 宏彰長坂 和彦巽 武司土佐 寛順寺澤 捷年
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2000 年 50 巻 5 号 p. 897-908

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抄録

老人医療の現場では, 病状の悪化に対して患者の全身状態を考慮し保存的治療のみで対応せざるをえない場合が少なからずある。今回, 長期臥床患者に併発した急性胆嚢炎・胆管炎に漢方治療が奏効した症例を経験した。1) 86歳男性。総胆管結石および急性胆管炎に対して茵〓蒿湯を投与し治癒した。漢方薬中断後, 2度に渡り再発したがいずれも茵〓蒿湯の投与により軽快し, その後の全身状態の改善に茵〓四逆湯が有用であった。2) 89歳男性。急性胆嚢炎に対して大柴胡湯エキスと茯苓四逆湯の併用が有効であった。3) 88歳女性。胆嚢結石および急性胆嚢炎に対して, 大柴胡湯と茯苓四逆湯が有効であった。高齢者の場合, 元来陰虚証であることが多いが病状の急性期には「先急後緩」の原則に従って治療することが重要と考えられた。

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