2000 年 51 巻 1 号 p. 15-21
『千金方』に収載される〓樓湯は胸痺に対する方剤とされているが, その治験報告は極めて少ない。我々は,『千金方』〓樓湯が奏効した胸痛, 胸部不快感の4症例を経験した。これらの有効4症例と無効4症例の臨床像を比較し, その使用目標について検討した。その結果, 有効例は虚証で, 冷えのぼせ, 肩こり, 弱脈, 歯痕舌, 臍上悸, 小腹不仁, 臍傍圧痛, 気鬱を伴うことが多かった。また,『千金方』〓樓湯証は〓樓薤白白酒湯あるいは〓樓薤白半夏湯証に上焦の気滞を伴うものと考えられた。