日本東洋医学雑誌
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桂枝茯苓丸の乳癌診断における診断治療的内分泌療法への応用
古妻 嘉一土方 康世
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2000 年 51 巻 1 号 p. 35-42

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抄録

近年本邦での乳癌死亡率は急激に増加しており, 乳癌の早期発見による早期治療が必要である。種々の画像診断法も著しく進歩してきているが, それでも乳腺症内に潜伏せる微小乳癌を発見することに難渋する場合が多い。西洋医学ではこのような場合に抗エストロゲン剤を投与して乳腺症を治療しつつ, 潜伏せる乳癌を浮かび上がらせる診断治療的内分泌療法が行われている。しかし, これらの薬剤には副作用も多く投与中断を余儀なくされる場合もあり, 従って確定診断として手術生検を必要とされる症例も多い。我々は東洋医学で安全性が高く乳腺症に有効とされている桂枝茯苓丸に着目し, 抗エストロゲン剤の代わりに利用出来るかを検討した。その結果, 乳腺症218例の内116例に桂枝茯苓丸を投与し, 4例の乳癌を発見した。この4例中2例は穿刺吸引細胞診にて, 残り2例は手術生検にて乳癌と確定診断した。診断的内分泌療法に桂枝茯苓丸が有効であることが示唆された。

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