日本東洋医学雑誌
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〓苡仁湯加味が奏効した慢性関節リウマチ患者に関する一考察
小暮 敏明新沢 敦藤永 洋新谷 卓弘嶋田 豊寺澤 捷年
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2000 年 51 巻 1 号 p. 51-59

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抄録

〓苡仁湯( 明医指掌) 加味方が奏効したRA患者の臨床的特徴について考察した。症例1は47歳女性。1983年両手関節痛で発症。84年近医でRAと診断, 金製剤, NSAIDs で加療されたが無効。89年和漢薬治療を希望し当科受診。桂枝加苓朮附湯, 附子湯で加療していたが95年9月, 多関節痛が増悪したため〓苡仁湯加羌活独活防風 (以下〓苡仁湯加味) へ転方, 疼痛の軽減と炎症反応の低下を得た。症例2は50歳女性。86年両手指関節痛出現, 近医でRAと診断され, 近くの薬局で購入した漢方薬を内服していた。91年当科受診。桂枝加苓朮附湯合桂枝茯苓丸料加防已黄耆〓苡仁で加療していたが, 96年5月多関節痛が増悪し〓苡仁湯加味へ転方。疼痛と炎症反応の低下を得た。症例3は42歳女性。91年多関節痛出現, 近医でRAと診断, NSAID とブシラミンの投与を受けた。93年当科受診。桂枝二越婢一湯加苓朮附, 桂枝芍薬知母湯で疼痛は軽減していたが, 96年5月両肘両膝関節痛が増悪したため〓苡仁湯加味へ転方, 疼痛と炎症反応の低下を得た。
本方の目標の一端を明らかにするため, 本方剤を投与した呈示3例を含む9例 (有効5例, 無効4例) を検討した。RAの Stage, Class は, ほぼ同様で両群とも変形が進行していた。口渇, 自汗に差はなく, 水滞と軽い血虚も両群にみられた。一方, 有効群は, RAに特徴的な早朝の関節痛に加えて, 夕刻にも疼痛を訴えたことから, 関節痛の日内での変化を検索した。その結果, 夕刻の疼痛は有効群の特徴で, 無効群では訴えていなかった。以上から, 本方剤は少陽病期の準位で虚証, 軽度の水滞と血虚を伴い, 日常生活後の夕刻に関節痛が増悪するRAに有効であることが示唆された。この知見は本方の従来からの運用法に加え新たな本方剤の使用目標の一つとなる可能性がある。

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