日本東洋医学雑誌
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漢方治療が奏効した, ステロイド抵抗性の重症アトピー性皮膚炎の3症例
桜井 みち代
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2002 年 53 巻 1-2 号 p. 55-61

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抄録

ステロイド抵抗性の重症の成人アトピー性皮膚炎に漢方治療が奏効した3症例を報告した。3症例とも紅皮症の状態であり, 滲出液, 浮腫, 悪寒, 皮膚の乾燥感が著明であった。各症例に対し, 本治と標治を組み合わせて, 治療した。症例1は38歳の男性で, 脾胃気虚と水滞が著明で, 本治に啓脾湯を, 標治として, 水滞に猪苓湯を, 紅斑, 落屑, 掻痒に清熱剤の三物黄苓湯を使用した。症例2は58歳の女性で, 脾が弱く, かるい眩暈, 頭痛があるため, 本治に半夏白朮天麻湯を, 標治に排膿散及湯を使用した。症例3は23歳の男性で, はじめに治頭瘡一方と桔梗石膏による標治をおこない, その後, 皮膚の乾燥感が非常に強いため, 本治に十全大補湯を選択し, 標治に黄連解毒湯や越婢加朮湯を加えて治療した。その後汗がでるため桂枝加黄耆湯に変方した。その後も症状の変化に応じて, 本治と標治を交互におこなったり, 組み合わせたりして治療した。3症例とも1年半後には略治あるいは軽度の皮疹を認めるのみとなった。

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