日本東洋医学雑誌
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酸棗仁湯が有効であった奇声を主徴とする夜間せん妄の2症例
田原 英一斉藤 大直川上 義孝荒川 龍夫寺澤 捷年
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2002 年 53 巻 4 号 p. 351-356

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抄録

療養型病床群で老人の夜間不隠行動に, 酸棗仁湯が奏効した症例を経験した。症例1は97歳, 女性。誤嚥性肺炎を繰り返し, 夜間奇声を上げるようになり, 当院へ転院。特に夜間病棟中に響きわたる奇声を上げ続けた。酸棗仁湯 (TJ-103) 7.5gを投与開始後, 体位変換, オムツ交換などの際に短時間奇声を上げるだけとなった。その後嚥下訓練を行い, 経口摂取が再開できた。症例2は80歳女性。脳出血後後遺症で当院へ転院。夜になると大声を上げるようになった。酸棗仁湯投与後, 夜間睡眠が良好となり, 日中はリハビリなどで過こせるようになった。高齢者が増加し痴呆による問題行動に対して対応が苦慮される中で, 高齢者の夜間せん妄の中に酸棗仁湯が適応となる病態が存在する可能性が示唆される。

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