呼吸器疾患の随証漢方治療について症例をふまえて報告した。適切な漢方方剤を検討するためには, 呼吸器症状の原因が, 咽喉, 鼻, 胸部, 呼吸機能低下のいずれにあるかを鑑別する必要がある。咽喉部の息苦しさが半夏厚朴湯により改善した症例を紹介した。目標として咽喉部の不安感が重要であった。この方剤は睡眠呼吸障害に対しても応用できた。慢性鼻炎の治療では水毒の脈候が診断上重要であり紹介した。胸部ではかぜ症候群, 慢性気管支炎, 気管支喘息, 間質性肺炎について述べた。慢性気管支炎に対する漢方方剤は, 咳嗽の乾湿と虚実により分類した。気管支喘息では小児例で小建中湯などの補剤適応例の増加が考えられた。間質性肺炎では茯苓杏仁甘草湯の有効例を提示し, 漢方治療報告例を紹介した。呼吸機能低下例に対しては八味地黄丸のピークフロー値改善作用を述べ, 適応病態の相違について麦味地黄丸料と比較検討した。