日本東洋医学雑誌
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加味帰脾湯により血液所見と全身状態の改善を認めた, 輸血後ヘモクロマトーシスを併発した骨髄異形成症候群の一例
関 義信
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2003 年 54 巻 2 号 p. 377-381

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抄録

老人の骨髄異形成症候群 (MDS) の治療では, 薬剤の効果は不十分である。輸血依存性の症例ではさらに治療に苦慮する。加味帰脾湯は血液学分野では特発性血小板減少性紫斑病に有効であったという報告が散見される。その使用目標には貧血も認められるので輸血依存性のMDSへの効果も期待される。そこで老人のMDS患者に加味帰脾湯を投与し, 血液学的所見の推移の検討および全身状態の推移の評価を行った。症例は74歳, 男性, 虚証。8年来のMDSでプレドニゾロン, 後にメテノロンを内服していた。2週に2単位程度の赤血球輸血が必要で, ヘモクロマトーシスを併発し, 食欲不振を呈していた。加味帰脾湯を投与し, 約2ヵ月後, 白血球数と血小板数が増加した。赤血球数は改善しなかった。骨髄所見は殆ど不変であった。食欲および活動性等の全身状態は, 投与6週後より著明に改善した。ヘモクロマトーシス併発の本症例で血液学的効果とは別に食欲不振および全身倦怠感の改善を認めた。今後補剤のより優れた効果として検討してゆく必要性があるものと思われた。

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