54 巻 (2003) 5 号 p. 945-950
微小血管性狭心症に起因すると思われた胸部不快感ならびに労作時の胸痛に対して大陥胸湯が奏効した1例を経験した。症例は72歳の女性。2000年6月, 労作時の胸部不快感に続いて, 安静時にも胸背痛を自覚するようになり当科入院となった。運動負荷心電図にて虚血性変化を認めた。漢方医学的には実証であり, 強い心下痞鞭と前胸部の圧痛より結胸と判断し, 大陥胸湯を投与した。大黄, 芒硝, 甘遂を同時に煎じた湯液では, 明らかな潟下効果はみられなかった。原典にしたがい甘遂末として大陥胸湯を投与したところ, 著しい下痢を生じるとともに胸部不快感は消失した。さらに労作時の胸痛も生じなくなった。冠動脈撮影では有意な狭窄病変および攣縮所見はなく, 微小血管性狭心症と診断した。