日本東洋医学雑誌
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遷延化した帯状疱疹後神経痛に烏薬順気散料が奏効した一例
星野 綾美小暮 敏明伊藤 克彦萬谷 直樹田村 遵一
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2004 年 55 巻 5 号 p. 649-653

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抄録

遷延化した帯状疱疹後神経痛 (post herpetic neuralgia: PHN) に対し烏薬順気散料が奏効した一例を経験した。症例は76歳, 女性。既往に糖尿病はあるが, 食事療法でコントロール良好。主訴は右頬部痛。2002年10月, 右頬部の帯状疱疹に罹患し近医に入院, アシクロビルの点滴静注を受け皮疹は消失したが, 同部位のピリピリする疼痛が持続した。PHNの診断でカルバマゼピン内服に加え, 星状神経節ブロックを受けたが痛みは不変であった。Visual analogue scale (VAS) では10cm中7cmの評価であった。5ヵ月間同レベルの疼痛が持続したため, 和漢診療を目的に●●●●当科紹介受診。受診時身体所見では, 右三叉神経第2枝領域を中心とした, ピリピリする自発痛があったが, 味覚や頭頸部の触覚は正常であった。疼痛は持続性で強さには日内変動があり, 疲労時に増強する傾向にあった。烏薬須気散料を投与して1ヵ月後には疼痛が軽減しはじめ, 2ヵ月後にはVAS 2cmとなった。3ヵ月後, 疲労時以外の疼痛はほぼ消失した。その後も再発はみられていない。
本症例の経験から遷延化したPHNにおいても烏薬須気散料を鑑別に挙げる必要性が示唆された。

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