日本東洋医学雑誌
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漢方治療が加速度脈波に与える影響の臨床的検討
木村 容子新井 信佐藤 弘
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2005 年 56 巻 6 号 p. 941-946

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抄録

漢方治療が加速度脈波に与える影響について検討した。漢方薬服用群 (1ヵ月101人, 3ヵ月後19人) 及び健常者13例の加速度脈波を測定した。加速度脈波の血管年齢 (Vascular Age: VA), b/a, d/a値を漢方治療の前後で比較した。健常者においてはいずれの場合においても有意な変化はみられなかった。また, 漢方治療患者の全体では, 治療後1ヵ月及び3ヵ月において, 有意な変化はみられなかった。しかし, VAと実年齢 (Age) の差に注目し, 初診時にVAが実年齢よりも高い群と低い群に分けて分析したところ, 初診時VAが実年齢より高い群では, 1ヵ月及び3ヵ月後を通じてVAは有意に改善していた。VAは, 血管壁の硬化などの動脈硬化に対する器質的な変化のみならず, 交感神経などの自律神経機能の変化に伴う機能的な変化も関与する。漢方治療は「身心一如」,「体のアンバランスを治す」などの基本理念から, 自律神経系のバランスにも関与していると考えられている。このため, VAが比較的短期間で変化の現れていることから機能的影響の関与も示唆された。

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