1996年8月から2004年6月までの間に, 当施設で鍼治療を行った Hunt 症候群患者のなかで, (1) ENoG値0%, (2) 発症90日以内, (3) 麻痺スコア20点未満という3つの条件を満たし, 尚且つ発症6ヵ月時点まで経過観察することのできた15名を対象として, 鍼通電治療と置鍼治療の効果を retrospective study により比較検討した。麻痺側顔面部へ鍼通電治療を行った群 (以下, 鍼通電群) は8名, 置鍼治療を行った群 (以下, 置鍼群) は7名であり, 両群間の背景因子に有意差は認められなかった。効果判定には, 柳原の40点法による麻痺スコアと, 西本・村田らの考案した後遺症評価法の変法による後遺症スコアを用い, 鍼初診時から発症6ヵ月時点までの麻痺スコアの変遷, 発症6ヵ月時点の後遺症スコアを, それぞれ Repeated measures ANOVA, Mann-Whitney のU検定を用いて比較した。その結果, 麻痺スコアの回復に両群間に有意差はなかったものの (p=0.0507), 置鍼群に比べ鍼通電群の回復に良い傾向がみられた。また, 後遺症スコアは両群間に有意差はみられなかった (p=0.51)。近年, 低周波刺激を禁忌とする意見がでてきているが, 今回の調査では後遺症の出現状況に差はなく, むしろ麻痺の回復に関しては鍼通電治療のほうが置鍼治療より良い可能性も示唆された。