人間と環境
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研究ノート
環境省「サーベイランス調査」と「ソラダス」にみるNO2大気汚染とぜん息有症率の関係
西川 榮一
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2019 年 45 巻 2 号 p. 12-25

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抄録

3歳児と6歳児を対象に,環境省は毎年大規模な大気汚染健康影響調査(「サーベイランス調査」)を実施している。その年度報告書をみると「大気汚染物質濃度が高くなるほどぜん息有症率が高くなるような関連性を示す結果はみられなかった」とまとめられている。このまとめに疑問を感じ,本稿で同報告書におけるデータの取り扱い,NO2濃度とぜん息有症率の関連性に関する解析について調べた。その結果同報告書のまとめとは異なり,NO2濃度とぜん息有症率は明らかな正の相関関係にあることがわかった。なぜ環境省報告書と本稿で異なった結果になるのか,その原因も調べた。大阪では,住民らによって「ソラダス」と呼ばれる環境調査が続けられているが,その調査においてもNO2濃度とぜん息有症率の間に,正の相関関係が見出されていることを紹介した。そして「サーベイランス調査」と「ソラダス」,両調査が示す結果から現在のNO2大気汚染が提起する課題について述べた。

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© 2019 日本環境学会
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