人間と環境
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原発再稼働賛否意見の変容に及ぼす受講者の専門性や学習状況,及び教員意識の影響
高野 拓樹乾 明紀加藤 千恵酒井 浩二
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2020 年 46 巻 2 号 p. 14-27

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抄録

本研究では,政治的リテラシー養成の観点から論争的問題を取り扱う科目「シチズンシップ」で得られた結果を元に,原発再稼働賛否意見の変容に対する受講者の専門性や学習状況,及び講義担当教員の意識の影響について検討した。その結果,講義を通じた賛否割合の変化の度合い(標準偏差:S)は学科により異なり,理系を中心に学ぶ学科の方が小さい傾向にあった。また,大学入学時におけるプレースメントテスト(英語)の平均点が高い学科,すなわち学習経験が豊富であろう学生が所属する学科ほど標準偏差に小さい傾向が見られ,これらは負の相関を示した(S=7.3~24.1,r=–0.438)。そして,原発再稼働について明確な反対意見をもっている教員のクラスについては,受講者の賛否割合の変容が小さく(S=5.3),常に反対割合が高い状態を維持していた。さらに,講義スタイルについては,講義内容を力を込めて説明する傾向がある教員のクラスは,淡々と説明することもある他教員のクラスよりも受講者の賛否変容が大きい傾向(S=16.6)にあった。このように,受講者の専門性や学習状況,及び教員の意識等によって,受講者の原発再稼働に対する意見に影響する可能性があることを明らかにした。以上の結果は,論争的問題を取り扱うシティズンシップ教育において,これらの影響因子を考慮に入れた教授法についての更なる検討の必要性を示唆している。

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© 2020 日本環境学会
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