人間と環境
Online ISSN : 2186-2540
Print ISSN : 0286-438X
ISSN-L : 0286-438X
研究ノート
小規模土地改良区におけるICTを用いた農業用水管理の省力化に関する事例報告
-汎用性の高いIT機器類を利用した使用感調査と新しいシステムの開発-
長屋 祐一伊藤 良栄松本 祐輔
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 46 巻 2 号 p. 28-36

詳細
抄録

小規模な土地改良区の用水管理を省力化するために,情報技術(IT)を利用したIT機器類を土地改良施設に設置し,インターネット回線と携帯電話回線を利用した遠隔操作機能と遠方監視機能を付与した。まず,汎用性の高いIT機器類と防犯カメラを利用して,インターネット回線による除塵機と転倒ゲートの遠隔制御と遠方監視を行った。組合員は遠隔操作用のブラウザと遠方監視用のブラウザをパソコンの画面のなかで適切に配置するために,ブラウザの切替や大きさの調整が必要となり,画面上でのパソコン操作に不便さを感じた。しばらく運用すると,ブラウザの更新により,プラグインソフトが適合しなくなったので,遠方監視が不能となった。次に携帯電話回線による携帯電話から発信したプッシュ・トーン信号を利用して揚水機の遠隔制御を行ったが,経年使用によって携帯電話からの制御が不能となる事例が見られた。これらの不具合を改善するために,専用アプリケーションを開発した。専用アプリケーションの主な機能は,土地改良施設の制御基板に接続したIT機器類の状況や制御用スイッチなどの遠隔操作に必要な情報と,ネットワークカメラによる現場のリアルタイム画像をインターネット回線により取得し,これらの情報を利用しながら,複数の土地改良施設の現状確認,遠方監視,遠隔操作,間欠運転の設定,操作した氏名と操作内容の記録である。IT機器類と専用アプリケーションの組合せで構成されるシステムはスマートフォン,タブレット,パソコンのいずれからも同種のブラウザを使用することで,どのデバイスからも統一感のある操作が可能となった。また,同システムを2年間使用したが,遠隔操作および遠方監視に不具合はなかった。

著者関連情報
© 2020 日本環境学会
前の記事
feedback
Top