人間と環境
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イタリアのアグリツーリズモの2000年以降における地域毎の推進状況分析と全国的な支援組織の活動把握
佐藤 輝
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2020 年 46 巻 3 号 p. 2-17

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抄録

イタリアの農村振興のためのアグリツーリズモ(AT)に関する統計的研究として,新たに提案したAT農家密度の指標(ATFD,110県別の人口1万人あたりの農家軒数)を用いて,2000年以降の地域毎の推進状況を分析した。その結果,トレンティーノ=アルト・アディジェ州,トスカーナ州,ウンブリア州内の諸県でATFDが特に高かった。この指標によると,上位15県では人口減少の兆候が見られなかった(8.6軒/1万人以上)。

さらにイタリアのAT農家への全国的な支援体制の概要と各組織の役割を解明するために,トスカーナ州とウンブリア州に加え,AT農家軒数が3番目に多かったロンバルディア州,および2002年以降のAT農家軒数の増加比が最も高かったプーリア州を対象にして,AT農家への支援の政策について州庁に半構造化インタビュー調査をおこなった。また,さまざまな支援を受ける側の3軒の典型的なAT農家でもインタビュー調査を実施した。これらの結果を総括すると,各州庁がAT州法や業務講習を監督する責任があり,アグリツーリズモ専門の主要な3つの協会がコンサルタントとプロモーションの面を強力に支援していることが分かった。欧州連合がAT農家の改築費用等への財政的支援を提供しており,イタリア農林食料政策省がAT農家民宿の品質保証・格付けを先導的に担っていることも把握した。

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