感染症学雑誌
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原著
成人における風疹の臨床像についての検討
加藤 博史今村 顕史関谷 紀貴柳澤 如樹菅沼 明彦味澤 篤
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2013 年 87 巻 5 号 p. 603-607

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抄録

背景:日本において 2012 年から成人男性を中心に風疹が流行している.風疹は小児で多い疾患であったため,成人における臨床像を示した報告は少ない.今回,我々は成人における風疹の臨床像を明らかにするために調査をした. 方法:2012 年 1 月から 2013 年 4 月まで東京都立駒込病院で風疹と診断された例を後方視的に検討した.診療録を用いて,症状,身体所見,血液検査について調査した.風疹の診断は発熱,発疹,頭頸部のリンパ節腫脹のいずれかを呈し,かつ,血清学的に風疹が陽性となった例とした. 結果:対象となったのは 27 例(男性:19 例,女性:8 例)であった.年齢の中央値は 34.5 歳[範囲:20~ 56 歳]であった.主な臨床症状は発熱が 96.3%,リンパ節腫脹が 92.6%,発疹が 85.2% であった.皮疹の癒合が 10 例(37.0%),色素沈着が 5 例(18.5%)でみられた.白血球の中央値は 3,800/μL[範囲:2,000~8,300/μL]であり,血小板は 12.9×104/μL[範囲:6.5~23.0×104/μL],AST は 27IU/L[範囲:16-49IU/ L],ALT は21IU/L[範囲:9~93IU/L],LDH は 277IU/L[範囲:168~440IU/L]であった.初診時風疹 IgM 陽性は 17 例(65.4%)であり,麻疹 IgM の偽陽性例は 7 例(26.9%)でみられた.発熱・発疹の持続期間はそれぞれ 5 日[範囲:3~9 日],4 日[範囲:3~8 日]であった. 結論:成人における風疹の臨床像は重症度や発疹の点において麻疹に似ていた.臨床医はこれらの特徴を理解し,診療にあたることが重要である.

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© 2013 社団法人 日本感染症学会
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