感染症学雑誌
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原著
風疹HI 抗体価別によるワクチン接種ブースターの長期効果
寺田 喜平赤池 洋人荻田 聡子尾内 一信
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2014 年 88 巻 1 号 p. 110-116

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抄録

院内感染対策としてワクチン予防可能疾患は抗体価によってワクチン接種を決定することが多く,どの低抗体価者までを接種対象とすべきか混乱が生じている.風疹HI 抗体の陰性およびHI 抗体価32 倍以下の大学生200 名に風疹単独ワクチンを接種し,接種1 カ月後と2 年後に抗体を測定して抗体価の変動を検討した.ワクチン接種後有意に抗体価が増加したものは,接種前HI 抗体価8 倍未満では98%,8 倍では87%,16 倍では67%,32 倍では32%と,抗体価が高いとブースターがかかりにくいことを示した.HI 抗体陰性者において,ワクチン接種後EIA-IgM 抗体およびEIA-IgG 抗体のavidity によってB 細胞メモリーの有無を調べた.それでは抗体陰性者の6~16%にB 細胞メモリーを認め,多くは1 回のワクチン接種歴があった.各HI 抗体価によるワクチン接種基準を設定し,接種2 年後においてその基準を満足しない割合を検討した.それでは,HI 抗体8 倍未満は4%であったが,8 倍以下で22%,16 倍以下で43%,32 倍以下では74%と,抗体価の基準を上げると不満足例が増加した.接種対象数は,HI 抗体陰性(8 倍未満)を基準にすると,HI 抗体価8 倍以下では1.5 倍,16 倍以下で2.5 倍,32 倍以下で4.7 倍に増加した.わが国の風疹ワクチン接種基準HI 抗体価16 倍以下では,接種1 カ月後に対象者の67%は有意な抗体上昇を認めたが,2 年後には43%が再び16 倍以下に低下していた.また接種対象数は陰性者のみと比較して,2.5 倍と多くなっていた.抗体価では正確にCRS 罹患防止を予測できないことから接種基準の抗体価が高く設定されていると思われるので,より正確に予測するため特異細胞性免疫などの測定を開発する必要があると思われる.

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© 2014 社団法人 日本感染症学会
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