感染症学雑誌
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原著
山形県で2004 年から2013 年の10 年間に分離したMycoplasma pneumoniae のマクロライド耐性遺伝子変異およびp1 遺伝子型解析
鈴木 裕瀬戸 順次板垣 勉青木 敏也安孫子 千恵子松嵜 葉子
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2015 年 89 巻 1 号 p. 16-22

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抄録

山形県で2004 年から2013 年の10 年間に分離されたMycoplasma pneumoniae 358 株を対象として,マクロライド系抗菌薬(以下,マクロライド)耐性遺伝子変異およびp1 遺伝子型解析を実施した. その結果,M. pneumoniae にマクロライド耐性をもたらす23S リボゾーマルRNA(以下,rRNA)ドメインVの点変異を6種類検出した(A2063G 変異81 株,A2063T 変異43 株,A2063C 変異1 株,A2064C 変異1 株,C2617G 変異4 株およびC2617A 変異1 株).変異株は2008 年以前には2 株のみであったが,2009 年はA2063T 変異を多く検出し,2010 年以降はA2063G 変異が増加した.2009 年以降の年間の変異検出率は20.4%(2011 年)から76.4%(2009 年)の間で推移した. また,本県で分離されたM. pneumoniae p1 遺伝子型は,1型(278株)および3種類の2型亜種(2a 型〈10 株〉,2b 型〈5 株〉および2c 型〈65 株〉)に分けられた.2012 年以前は1 型菌が多く,年間の1 型菌の割合は85.2%(2004 年)から100%(2008 年,2009 年)で推移したが,2012 年以降2 型菌亜種の割合が増加し(2012 年;26.5%,2013 年;66.1%),本県において流行の主流を成すM. pneumoniae p1 遺伝子型が1 型から2 型亜種に置き換わっている可能性が示された. さらに,2012 年以降に本県で分離されたM. pneumoniae のうち,p1 遺伝子1 型菌は高率にマクロライド耐性遺伝子変異を保有していた(2012 年;65.1%,2013 年;95.2%)のに対して,2 型菌亜種からは遺伝子変異が検出されず,本県では2 型菌亜種のマクロライド耐性遺伝子変異の獲得が進んでいないことが示唆された.

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© 2015 一般社団法人 日本感染症学会
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