感染症学雑誌
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原著
市販鶏レバーおよび臨床材料から分離した基質特異性拡張型 β-ラクタマーゼ産生Escherichia coli およびKlebsiella pneumoniae が 保有するblaCTX-M 型別に関する検討
菅 美樹四宮 博人北尾 孝司
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2016 年 90 巻 3 号 p. 305-309

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抄録

市販鶏レバーから分離されたextended-spectrum β-lactamase(ESBL)産生Escherichia coli 40 株,および臨床材料から分離されたESBL 産生E. coli 43 株ならびにKlebsiella pneumoniae 42 株を対象として,DNA シークエンスによりblaCTX-M-typing を実施した.各blaCTX-M group 型別を実施したところ,blaCTX-M-1 group に属する31 株の中ではblaCTX-M-1 が13 株と最も多く,全て鶏レバー由来E. coli であった.次いで,blaCTX-M-55 が 9 株でその由来は鶏レバーのE. coli が8 株および患者のE. coli が1 株であった.さらに,blaCTX-M-15 7 株は,何れも患者由来株でその内訳は,E. coli が6 株およびK. pneumoniae が1 株であった.blaCTX-M-2 group に属する 39 株は全てblaCTX-M-2 であった.blaCTX-M-9 group に属する55 株は,blaCTX-M-14 保有株が36 株と最も検出頻度が高く,その内訳は,患者由来E. coli が20 株,患者由来K. pneumoniae が13 株および鶏レバー由来E. coli が3 株であった.次いで検出頻度が高かったのはblaCTX-M-27 17 株で,その内訳は,患者由来株のE. coli 10 株およびK. pneumoniae 7 株であった.さらに患者由来E. coli からblaCTX-M-9,患者由来K. pneumoniae からblaCTX-M-90 が1 株ずつ検出された.これらの結果から,鶏レバー由来E. coli blaCTX-M-1blaCTX-M-2 およびblaCTX-M-55,患者由来E. coli blaCTX-M-14blaCTX-M-27,患者由来K. pneumoniae blaCTX-M-2blaCTX-M-14 およびblaCTX-M-27 で,保有するblaCTX-M 型が異なっていた.そのため,鶏レバー由来のESBL 産生E. coli が,直接ヒトの腸管内に定着した可能性は低いと考えられた.

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© 2016 一般社団法人 日本感染症学会
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