感染症学雑誌
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原著
RS ウイルス,ヒトメタニューモウイルス感染症入院例の胸部単純X 線写真と重症度の検討
山根 侑子松原 啓太
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2017 年 91 巻 6 号 p. 943-947

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抄録

RS ウイルス(RSV)感染症とヒトメタニューモウイルス(hMPV)感染症の胸部単純X 線所見や重症度については,まだ一定の見解を得られていない.我々は,2014 年4 月から2015 年3 月までの1 年間に広島市立舟入市民病院小児科に入院したRSV 迅速検査陽性例,hMPV 迅速検査陽性例を対象として,両ウイルス感染症の胸部単純X 線所見と臨床像を検討した.胸部単純X 線写真で肺炎所見を認めた例(肺炎例)は,RSV 陽性31/126 例(24.6%),hMPV 陽性31/73 例(42.5%)で,hMPV 陽性において有意に多かった(p <0.01).RSV 陽性肺炎例とhMPV 陽性肺炎例の,努力呼吸の有無,入院時SpO2 値,血清CRP 値,入院日数を比較すると,いずれもほぼ同様であった.また,RSV 陽性とhMPV 陽性のそれぞれで,肺炎例と肺炎所見がなかった例に分けて臨床像を比較すると,RSV 陽性,hMPV 陽性ともに肺炎例の入院時SpO2 値が低く,血清CRP 値が高い傾向があったが,その差はごくわずかであった.努力呼吸の有無と入院日数は有意差がなかった.以上より,hMPV 陽性例はRSV 陽性例より肺炎の頻度が高いが,重症度は同程度であり,肺炎の有無によっても重症度に明らかな差は生じないことが示唆された.

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© 2017 一般社団法人 日本感染症学会
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