感染症学雑誌
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長野県松本地域の1 医療機関における小児呼吸器感染症由来ウイルスの検出状況
中沢 春幸嶋﨑 真実竹内 道子粕尾 しず子
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2017 年 91 巻 6 号 p. 948-955

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抄録

 乳幼児期のウイルス性呼吸器感染症は,喘鳴を呈し重症化することがある.近年,特にRS ウイルス感染症患者の報告数は増加しており,発生動向を調査することは重要である.本研究は,長野県松本市の1 医療機関において2013 年10 月~2016 年2 月までに,小児急性下気道炎患者から採取した咽頭ぬぐい液または鼻腔ぬぐい液301 検体を検査材料とし,RS ウイルス(RSV),ライノウイルス(HRV)等の検出を行い,喘鳴合併の有無について検討した.また,同地区のRS ウイルス感染症患者の発生動向を合わせて検討した.検査した301 検体中269 検体(89.4%)からウイルスが検出された.RSV は,当地区の流行期である晩秋から春先にかけて患者報告数の増加にともない138 検体から検出され,喘鳴を認める患者は検出患者の57% を占めた.また,その比率は流行シーズンを経るごとに増加する傾向にあった.一方,HRV は112 検体から検出され,そのうち61.9% が喘鳴を呈し,調査期間を通じてHRV による喘鳴が認められたことから,近年,HRV 感染症もRSV と同様に,症状の重症化に関与する可能性が推察された.

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© 2017 一般社団法人 日本感染症学会
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