感染症学雑誌
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原著
当院における過去13 年間の侵襲性インフルエンザ菌感染症の検討
清水 博之木田 沙緒里杉山 嘉史椙山 聡一郎松本 裕子太田 嘉築地 淳宮島 栄治伊藤 秀一
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2018 年 92 巻 3 号 p. 347-352

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抄録

2013 年に乳幼児へのインフルエンザ菌b 型(Haemophilus influenzae type b:Hib)ワクチンが定期接種化された.以後,小児における侵襲性Hib 感染症は激減した.しかし,新たにHib ワクチンではカバーされない無莢膜型インフルエンザ菌(non-typeable H. influenzae:NTHi)感染症の台頭が危惧されている.このため,過去13 年間に当院で経験した全年齢での侵襲性インフルエンザ菌感染症について検討を行った. 2003 年1 月から2015 年10 月の間に血液培養からH. influenzae が検出された20 症例を解析対象とし,莢膜型別免疫血清を用いたスライドグラス凝集法およびPCR 法で血清型別を決定した.患者年齢分布は小児11 例(年齢中央値2 歳,13 日~5 歳),成人9 例(年齢中央値71 歳,29 歳~88 歳)であった.莢膜型を特定しえた小児8 例は全例b 型であり,小児例は全例2010 年までに偏在していた.一方,成人9 例中8 例は2012 年以降に偏在し,NTHi が6 例,e 型が1 例であった.感染臓器の内訳は,髄膜炎5 例(全例小児),急性喉頭蓋炎5 例(全例小児),肺炎5 例(全例成人),胆管炎3 例(全例成人),子宮内感染1 例(成人),不明1 例(小児)であった.乳幼児に対するHib ワクチンの普及後,乳幼児の侵襲性Hib 感染症は激減した.一方で成人の髄膜炎,喉頭蓋炎以外の侵襲性NTHi 感染症の顕在化が推測され,今後の動向に注意を払うべきと考えられた.

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© 2018 一般社団法人 日本感染症学会
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