2018 年 92 巻 3 号 p. 365-370
目的:感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)の改正により,2016 年4 月から病原体サーベイランスの情報収集体制が強化された.そこで,5 類定点把握対象のウイルス性疾患について,その影響を検討した.
方法:病原体検査を実施している全国の地方衛生研究所等81 施設を対象に,2014 年から2016 年までの病原体検査の情報をアンケートにより調査し,法改正前の2 年間と法改正後の2016 年の検体搬入状況を比較した.
成績:インフルエンザについては,法改正により搬入検体数は顕著に増加していたが,その他の小児科定点把握対象疾患では,法改正による共通の変化は認められなかった.
結論:今回の感染症法改正による定点把握対象疾患を対象とした病原体サーベイランスへの影響は,インフルエンザに関しては,検体収集の標準化により検体数の増加が成果として認められた.さらに,この検体数の増加によるその他のウイルス性疾患サーベイランスに対する影響は少ないものと考えられた.