1981 年 55 巻 10 号 p. 701-708
1978年1月から1979年12月までの2力年間, 大阪空港検疫所において1,193例の旅行者下痢患者の検便を行つた結果, 221例から腸炎ビブリオを分離した.分離率は18.5%で, サルモネラ属菌, 赤痢, NAGビブリオ, コレラ菌の分離率より高かつた.
感染推定国はフィリピン, タイ, 韓国, 香港, 台湾の順に多く, ほとんどの例の感染推定国は東南アジア, 東アジアに限つていた.韓国における感染は6月から10月に集中していたが, その他の国においては特に季節変動が認められなかつた.33例では腸炎ビブリオ以外に他の腸管感染菌が分離された.患者の主要症状は, 下痢, 腹痛, 嘔吐, 発熱で, 一般に重症例が多く, 下痢回数が1日10行以上の症例が34例もあつた.
分離菌224株の血清型別を行つた結果, 44株は従来報告されている血清型に型別されなかつた.これらの菌株から新しいO抗原およびK抗原を持つ菌株を同定した.