感染症学雑誌
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環境別HAVおよびHBV浸淫状況
丸山 直人佐田 通夫神代 龍吉日野 和彦Tomoki ARITAKA瀬戸山 浩長田 英輔安倍 弘彦谷川 久一横山 敏登白地 茂喜白地 孝
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1985 年 59 巻 2 号 p. 77-85

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抄録

種々の環境要因がHAVおよびHBVの浸淫度に与える影響を検討するため, 1978年に採血した筑後地区一般人188名, アルコールまたは覚醒剤中毒者120名, 外国航路船員68名, 精薄施設児93名, 医療従事者73名および林業従事者75名についてHAVおよびHBV関連抗原抗体を測定した.更に, 抗HAV抗体保有率の年次的推移を比較検討するため, 1983年に採血した一般人302名についても抗HAV抗体を測定した.この結果, 1978年度の一般人のHAVおよびHBV浸淫度は全国での調査結果と差はなく, 1978年と1983年度の一般人の抗HAV抗体保有率の比較では, 1978年度の抗体保有率の上昇曲線が5年程右へ移動していることより戦後の環境衛生の改善が抗体保有率に関与していると考えられた.また, アルコールまたは覚醒剤中毒者では, 抗HAV抗体保有率が20歳代で25.0%, 30歳代で70.4%を示し, HBV感染率は20歳代で70.0%, 30歳代で80.0%と, ともに一般人より高率であった.更に, この群ではHBs抗原陽性者が120名中8名 (6.7%) で, その内HBs抗原持続陽性者は3名 (2.5%).一過性陽性者は5名 (4.2%) と一過性陽性者が多かった.外国航路船員のHAVおよびHBV浸淫度そして精薄施設児と林業従事者のHAV浸淫度は一般人と比べ差はなかった.医療従事者では, 40歳代の抗HAV抗体保有率が58.8%で一般人より低かった.

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