感染症学雑誌
Online ISSN : 1884-569X
Print ISSN : 0387-5911
ISSN-L : 0387-5911
慢性腎不全患者に対するインフルエンザワクチン接種
加地 正伸
著者情報
ジャーナル フリー

1986 年 60 巻 1 号 p. 51-63

詳細
抄録

慢性腎不全患者におけるイジフルエジザワクチジ接種時の抗体産生ならびに安全性を検討するため, 血液透析患者 (HD群) 49例, 腹膜透析患者 (PD群) 17例, 保存的治療を受けている慢性腎不全患者 (conservative群) 22例の各慢性腎不全患者ならびに健康成人 (control群) 29例に対してイジフルエジザHAワクチジを接種し, 以下の結論を得た.
1) HD, PD, conservative群のいずれの群においてもワクチジ含有抗原すなわちA/Kumamoto/37/79 (HIN1), A/Ishikawa/7/82 (H3N2), B/Singapore/222/79に対するHI価の上昇 (幾何平均HI価の上昇, HI価保有率の上昇およびHI価上昇率) はcontrol群と同程度に良好であった. 各ワクチジ含有抗原相互間での比較では, control, HD, PD, conservative群ともB/Singapore/222/79に対してよりA/Kumamoto/37/79 (HIN1), A/Ishikawa/7/82 (H3N2) に対するHI価の上昇の方が良好であった.
2) A (H3N2) 変異抗原のうちA/Kyoto/C-1/81に対するHI価上昇率はHD, PD, conservative群ではcontrol群に比して, また, A/Niigata/102/81に対するHI価上昇率はHD群ではcontrol群に比して有意に劣っていた.すなわち, HD, PD, conservative群の各慢性腎不全患者では, 一部変異抗原に対するHI価は健康人程の上昇を示さなかった.
3) 副作用としての局所反応, 全身反応は慢性腎不全患者においても健康人と同様に特記すべきものは認められなかった.
4) ワクチジ接種により慢性腎不全の治療管理状態に悪化を認めなかった.
以上の成績から, 慢性腎不全患者ではワクチジ株の選定が適切であればワクチジ接種により健康人と同程度のHI抗体が産生され, しかも安全にワクチジを接種し得ると結論され, 慢性腎不全患者にも積極的にワクチジ接種が行なわれるべきであると考える.

著者関連情報
© 日本感染症学会
前の記事 次の記事
feedback
Top