1986 年 60 巻 10 号 p. 1125-1132
弱毒菌感染の背景因子を追求するため, 大腸菌, クレブシエラ, 緑膿菌, セラチア, アシネトバクターの5菌種を用い, 対象臓器を肺に絞って感染実験を行った.体重20g前後のdd系マウスを用い, 上記5株をほぼ108台の菌量でマウスに噴霧感染させ, その肺内菌数を算定した.健常マウスでの感染では, 当初104~5台で存在していた肺内菌数が48~72時間後にはクリアランスされたのに対し, エンドキサン処理マウスでは, 肺内菌数がこれよりやや延長するものもみられた.そこでさらに, 同株のエンドキサン処理を行って, ABPC, GM, CFS, CEZの4種の抗生剤を投与して環境内に放置し, 経過をみたところ, 対照群では1匹の発症しかみられなかったのに, CFS投与では1匹, CEZ投与では2匹, ABPC投与群では4匹と, ペニシリン系やセフエム系投与群では却って対照群より高頻度の発症がみられた.これらの病態をさらに追求するため, 緑膿菌とセラチアに限って, さらに詳しく実験を行ったが, ほぼ同様の菌の推移がみられ, これは病理学的所見によっても裏付けられた.
これらの成績から, 弱毒菌の感染には, 生体側の免疫能, 感染し易い菌の種類, 抗生物質の使用の有無という3つの大きな要因が関与するものと思われた.